まついかずの絵本

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更新日 2011-05-02 | 作成日 2008-07-08

  マコたんとおとうふやさん

荒スミ子 絵   
松居 和 文

発売元/ロードプロモーション
http://www.roadpromotion.net
mail@roadpromotion.net
043-293-2828 FAX: 043-293-2869

マコたんとおとうふやさんマコたんとおとうふやさんマコたんとおとうふやさんマコたんとおとうふやさん

  すなのお城

秦 智美(さとみ)絵   
松居 和 文

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 四年前のことになります。

 のりつぎの くうこうまちあいしつでのことでした。

 「いいもの見つけたんだ」
 6才になるマヤが かけよってきました。

 「すごくいいんだよ。見にこない?」
 手を引かれて行ってみると それは お土産屋さんのショーウィンドーの中にかざってあった 砂をかためて作られた 10センチくらいの 白い小さなお城でした。

 「いいでしょ」
 マヤは いくつかあるお城のうちの一つを指さしました。

 そのお城は、とがった屋根の塔のある中世のお城と、スペースシャトルと、高層ビルが砂で ひとつになって、小さなピンクのフラミンゴと 緑色のワニと 人魚がくっついているものでした。

 「こっちの方がいいんじゃない?」
 わたしは となりにあったお城だけの お城をゆびさしました。 

 「そうかなあ」とマヤは 少しざんねんそう。
 でも、さんざん考えたあげく わたしのすすめたお城らしいお城でなっとくしたようなので それを買ってやりました。

 「これ買ってもらった」
 うれしそうに まちあいしつで待っていた ママに見せていたのですが、
しばらくしてふいに
 「マヤちゃんね、さっきのお城の写真とってくる」

 マヤは ひと月ほど前に 初めて自分のカメラを買ってもらったのです。
 ごく安いかんたんなカメラでしたが ちゃんとフラッシュもついていて マヤはときどき 好きなものをみつけては フィルムの残りの枚数をたしかめながらとっていました。

 二人は、もう一度 さっきのお土産屋さんにいきました。
 「ガラスにフラッシュが はんしゃしないようにね」 という助言をきいて マヤは しんちょうに考えながら写真を二枚とりました。

 そのとき マヤの目に 涙が浮かぶのが見えました。

 「ほんとうにほしいんだったら いいなさい」

 「でも あれいいとは思わないでしょ?」

 わたしはしゃがんで マヤの目を見ながら いいました。
 「ひとはみんな 好きなものが 少しずつちがうんだから、どうしても好きなときには ハッキリ言っていいんだよ」1.jpg
 せつない気持ちが あふれそうになりました。

 マヤの目から みるみる涙がこぼれ落ちました。

 わたしは、観光客用に作られた そのお城を もう一度見つめました。 
 そして その白いお城が 少しずつ好きになり始めていました。
 わたしは マヤを 抱きしめてやりたかった。

 わたしたちは お城を もう一つ買いました。

 もう一つ買った その砂のお城は たぶん いつか子供部屋のかたすみで 忘れられてしまう運命にあるのでしょう。
 でも きっとわたしの心の中には いつまでも その白い奇妙なお城が立ちつづけるような気がします。

はじめのいっぽ  

大島節子 絵  
松居 和 文

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ほいくえんの にわに たんぽぽのはなが さいています。
あたたかい ひざしのなか、
五月のかぜが 
こどもたちと せんせいの あいだを すりぬけます。


みち子先生が、園長しつに とびこんできました。
「さっちゃんが、あるきました!」

ごろんごろん、があって、

はいはい、があって、

つかまりだち、があって、

さっき、
さっちゃんが、はじめて ひとりで あるいたのです

さあ、たいへん


「ずーっと れんしゅう していたんです。
さっき、手をはなしたら、
わたしに むかって とんとんとん て、あるいたんです」

「そう。
それは よかったわね」

園長先生は みち子先生を みて うれしそう。


「どれ どれ、わたしも みせてもらおうか」

「はじめてだったんです。わたし。
うけもちの子が、あるきだすのを見たのは」
みち子先生は、そう言って、ちょっと なみだぐんでいます。

「いっしょうけんめい だったからねえ、あなたは……」


「おおさわぎしちゃって すみません」
みち子先生は、はやく はやく、というように さきを あるきます。

「一年目の 保育士に、かなう 保育士は いないねえ」
園長先生は、みち子先生の、はやあしで おいかけました。


「さっちゃん。 園長先生がきたよ。
もういっかい やってみようね」

さっちゃんは、はいはいを しています。


「さあ、たっちして。そうそう」
さっちゃんの りょうてをとると、
「もういっかい おねがいね。」

しんけんなかおで たのみます。
さっちゃんは、ニーっとわらいました。


「よし、がんばるぞー。いきますよー」
みち子先生が、てを はなすと さっちゃんは ふらふらしながら たっています。


「はい、おいで。はい」
みち子先生が てを ぱちぱちさせると、
さっちゃんは ちょっと かんがえてから、
おもいきって、
とんとんとん、と
3歩 ちいさく あるいて、
みち子先生の うでの中に たおれこみました。

みち子先生は さっちゃんを ぎゅーっと だきしめます。


園長先生は、そのようすを しっかり ながめていました。

わたしにも おぼえがある……。


さっちゃんを だきしめたまま みち子先生が、園長先生を見上げました。
園長先生が わらいました。
みち子先生も わらいました。


「おかあさんに いわなくっちゃ」
みち子先生が さっちゃんに 言いました。
「歩けるように なりましたって、ほうこくしなくっちゃねえ。
よろこぶぞー、おかあさん」

風が、まどから ふいてきます。

「それはね、言ってはいけないのよ」
園長先生が しずかなこえで言いました。
「おかあさんにはね。
もうすぐ あるけるように なりますね、
もうちょっとですよ、って言わなきゃいけないの」

みち子先生が さっちゃんのかおを みつめました。
さっちゃんは わらいました。


「わかるね」
園長先生は そう言って、ちょっとだけ、ほんの ちょっとだけ さびしそうでした。

「はい」
みち子先生は さっちゃんの 目を見たまま うなづきました。
そして、

さっちゃんの 小さなゆびを にぎりしめ、
こころのなかで そっと うたいました。


はじめの一歩は だれのもの?
おかあさんのもの だれのもの?
はじめの一歩は だれのもの?
おとうさんのもの だれのもの?

はじめの一歩は だれのもの?
いつか きっと わたしのもの?


ドリームウォーク  

絵 馬場敬一 http://blog.babaart.net/
文 松居 和

発売元/ロードプロモーション
http://www.roadpromotion.net
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043-293-2828 FAX: 043-293-2869

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おとうさんは なやんでいます。
しごとが たいへん
いそがしすぎます。

ふと りょこうの おすすめパンフレットが 目にとまりました。
ふかい みどりに つつまれた 山の こうくうしゃしんでした。

けわしい山の頂きに 神社があって、そこまで 道が一本つづいています。 
登るとちゅうに 小さな お社がありました

「人間は こういうところで 祈るんだ」 


のぼって のぼって……、
とちゅうでちょっと祈って。

そしてまた のぼって。

頂上について…… 祈るんだ。


北極圏に住む人たちは 悩んだとき、雪原を どこまでも ひとりで 歩いてゆく。
まっすぐ ひとりで あるきつづける。
じぶんで つくる いっぽんみち。
なやみがきえると もどってくる。 


海辺に住む人たちは、海をみつめる。
じっと 見つめる。


砂漠に住む人たちは、夜空を見上げる。


月を見つめる。

星を見つめる

庭を見つめる

手のひらを見つめる


遠足の日。
おとうさんといっしょに 山へ のぼる。

二人で 一心にのぼる。

だまってのぼる。
水の音を ふみしめ 
のぼる。

……だいじょうぶか、がんばれよ……

頂上についた。

みんなうれしそう。

ケンちゃんのおとうさんが ちいさなこえで 園長先生に ききました。
「幼稚園の遠足で、お酒は いけませんよね」

園長先生は 空をみあげて つぶやきました。
「わたしは ちかごろ、目も耳も 遠くなりましてねえ……」

おとうさんたちは かおをみあわせます。

おとうさんたちの 酒盛りです。
たのしそうに 笑っています。
うたっています。

そのまわりで ぼくたちが遊びます。

そのようすを やまが みています。