シスターチャンドラの功績

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「シスター•チャンドラとシャクティの踊り手たち」

製作・監督:松居 和

第41回ヒューストンワールドフェスト国際映画祭レミ賞ドキュメンタリー映画部門、金賞受賞

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シスター・チャンドラの功績


 シスター・チャンドラは、1990年以来、献身的に南インド社会最下層の女性たちの育成と、生活改善に尽くしていることで、インド全土で広く信頼と尊敬を集めている。カースト制のもとで最下層のアウトカーストとして抑圧される人々はダリットと呼ばれるが、そのダリットの中でも最も助けを必要とする女性の能力を育み自信を与え、その能力を発揮できるように、全人的な教育を行っている。シスター・チャンドラは、学校教育からも見放された少女たちを受け入れ、彼らと寝食を共にしながらこれまでに、約300人の高い資質をもった女性リーダーを育てあげてきた。彼女らは現在はそれぞれの村を中心に、村全体のサポート、行政との橋渡し、子供の教育といった活動に従事し、以前泣き寝入りしていた女性とは思えないほどめざましい活躍をしている。シスター・チャンドラの教育システムは、学ぶ機会をほとんど与えられてこなかったダリットの女性たちが効果的に学べるように工夫されており、経済的に自立できるように、実用的な技術も学ばせる。

 女性のおかれた過酷な状況を告発しながら、それに屈しない態度を養う方法として、シスター・チャンドラは、タミルナードゥ州に伝わる民俗芸能の積極的な利用を重視している。歌に自らの境遇や抵抗の精神をこめて歌いそれをおどるのである。 ちなみにダリットはタミルナードゥ州の場合人口の約20%をしめるほどの大きな割合をしめる人々である。そしてこの階級社会におけるダリットの問題は非常に深刻である。


 活動のきっかけは、もともと社会の弱者につくしたいという希望を強くもち、このため社会福祉事業を重視する現在所属の修道会に入った。その研修途中、身分を隠しダリットの人々と農作業を共にすることがあった。炎天下で行う激しい農作業のために渇いたのどを潤すことさえも許されず、水を飲もうとした矢先、地主の女性になぐられ激しくののしられた経験が、ダリットのために働くことを決意した契機のひとつとなる。さらにダリットの継承してきた民俗芸能が、見下されふりむかれなくなっている現状を目にし、こうした民俗芸能の活性化こそが自尊心や誇りを育て、さらに一般の人々の意識を喚起する大きな役割があることに気づいたのである。長年人々に育まれてきた民俗芸能は体全体で人々に力を与えることから、シスター・チャンドラは積極的に、漁民、山岳民といったタミルナードゥ州各地の民俗芸能の刷新化につくし、女性リーダー訓練の一環として行ってきた舞踊の訓練が、ついに舞踊団を構成して公演活動を行うようにまでなった。公演活動は17年の間に2000回をこえ、30-40万人以上の人々が、ダリット女性たちの訴えを、舞踊と歌という形で見たり聞いたりしたことになる。2008年ワールドフェスト・ヒューストン国際映画祭では、シスター・チャンドラの活動をドキュメンタリーにした作品(監督松居和氏)が金賞を受賞している。 


シャクティセンター:                   



 1990年に村の一画に家を借り、20名の貧しく学校に1-2年しか通うことができなかった少女たちを受け入れ、識字教育、村のワーカーとしての技術、洋裁などの自立のための技術、保健、保存食つくり、民俗舞踊などを教え、共に暮らしながら彼女たちをリーダーへと育てはじめた。それ以来毎年こうした訓練が続けられている。民俗舞踊・民謡を利用しながら、差別の問題を直視しその問題解決のために必要なことをより深く学べることに気づき、訓練の中に民俗舞踊・民謡をとりいれたところ、少女たちの親たちの熱心なすすめにより、舞踊や民謡の舞台を見せるようになった。ダリットの女性たちの公演は非常に社会的インパクトが大きく、次第に各地にシャクティの舞台のうわさが広がり、現在ではたいへんなひきあいで、こうした公演の収入により、農村での様々な活動の資金をえている。女性リーダー訓練のための資金のほとんどが、少女たち自らの公演収入でまかなわれているという、完全に自立した基盤をもち活動を継続させている。


現在では女性だけではなく、こどもたちのために各村に補習塾をひらいたり、子供対象のプログラムを多く開催し、子供たちがあらゆることに挑戦できるような機会をあたえたり、村同士やカースト同士の融和をはかるために、スポーツ大会など様々な共同行事も運営している。また他の社会福祉団体や学校から、民俗舞踊や民謡の指導も行っている。                                                 


成果:


 約300名にもおよぶ重要な女性リーダーたちを輩出してきたことが第一の成果である。ダリットであっても社会で堂々と生きていく女性たちであり、実際に様々な問題を彼らが村人たちと解決するほか、こうした存在がより若い世代への大きな刺激となっている。シャクティが行う舞踊公演活動は、国連主催の反差別世界会議をはじめ、人権や女性の問題をめぐっての集まりにおいて、会のハイライトとして認識されるまでにひろがり、ここでうたわれる歌詞には重い意味がこめられている。自分を卑下したり低くみる子供たちや人々に対しては、ダリットの芸能のすばらしさを教えることで、自信を回復する契機となっている。



 女性リーダー養成の実績をもとに、子供たちにも幅広く活動範囲をひろがっており、2008年5月には、300人ほどの子供が集まり第4回夏季こどもキャンプがおこなわれるなど、子供たちの関心や能力をひきだす多くの活動が行われるようになった。これまで自信のなかったダリットの子供たちにしても、自然に積極的な社会参加意識や、生きていくことに自信を取り戻す表現や人権意識が芽生えてきている。

(黒川妙子)